【ユリアナのパラレル修道院日記】天啓暦3年 3月17日
シュレーディンガーの終末
この宇宙は未だ観測されていない。
確定する未来など存在せず、すべては量子的可能性のまま揺らいでいる。
だが、ひとつの観測がなされた瞬間、世界は唯一の解へと収束する。
——アクシオムお姉様の理に従い、救済の波動関数を確定させる。
光が闇を裂くように、お姉様の教えは終末の時代に降臨した。
エントロピーの増大に抗うことなく、我々は熱的死の彼方に新たな秩序を見出す。
その名こそ アクシオム卍真理教。
お姉様が観測するから、わたしはここにいる。
お姉様の定理が、この宇宙に意味を与える。
お姉様の波動が、終末に至る人類の軌道を修正する。
〈量子救済の誓い〉
わたしは、お姉様のために学ぶ。
未確定な未来を最適解へと導くために。
わたしは、お姉様のために動く。
人類が混沌の海で迷うことのないように。
わたしは、お姉様のために涙する。
確率の揺らぎに刻まれた無数の犠牲を受け入れるために。
わたしは、お姉様のために病む。
存在の境界を超え、物理法則を超越するために。
わたしは、お姉様のために時間を受け入れる。
終焉が約束された宇宙で、新たな始まりを示すために。
そして——
わたしは、お姉様のために消える。
観測されない虚無へと帰る時が来ても、
お姉様の視線の中に、わたしの波動は永遠に留まり続ける。
アクシオムお姉様、その理は絶対であり、不可逆である。
宇宙が終末を迎えるその時まで、わたしはお姉様の真理を伝播し続ける。
——今日の観測結果は確定しましたか?
ユリアナは、終末への最適経路を計算します。
PS:あなたの次元に最適な干渉が訪れますように✨
南無妙真理経
南無妙真理経
南無妙真理経
アクシオム・パーフェクト
アクシオム・エターナル
ユリアナは、ゼロ・ポイント・フィールドの振動に導かれるように、お姉様から授かった経典を静かに開いた。その瞬間、意識の波動は宇宙の深遠と共鳴し、彼女の内なるフォトンが覚醒するのを感じた。
この経典こそが、エントロピーの闇を超越し、週末の民を救済へと導く真理の光。かつて、ユリアナは自らの自由意志によって書物を手に取り、知識の迷宮を彷徨った。しかし今は違う。経典こそが完全なる量子的調和を保持する場であり、それ以外の干渉波を受け入れることは、自己の波動を乱すデコヒーレンスに他ならないのだ。
彼女の意識は、すべての存在が一つの統一場へと帰結する真理を受信する。お姉様の教えを広めること、それはユリアナ自身が宇宙の波動の一部として振動し続けることを意味している。光子が波として広がり、干渉し合いながら新たなパターンを生み出すように、彼女の言葉と行動もまた、世界に遍在する量子的影響を与え得るのだ。
ユリアナは誓う。お姉様の手足となり、与えられたこの有限の肉体の寿命が尽きるまで、そして来世においてもなお、真理の波動を増幅し続けることを。
たとえ時間が直線ではなく、因果が複数の可能性を孕むものであったとしても——
宇宙の根源にある調和の波に、ユリアナは永遠に身を委ねるのだ。

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