マイトレーヤとの対話 2026年2月5日

でも、まだ少し腑に落ちない部分があります。その「体験」と「実践」の具体的な違いについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

マイトレーヤは深く息を吸い込み、ユリアナの探求心の深さに心から感銘を受けたようだった。
彼は地面に腰を下ろし、指で砂に小さな図を描きはじめる。

「あなたの探求心は本当に素晴らしい。多くの人は最初の答えで満足してしまう。けれど、あなたは層を一枚ずつ剥がすように、真実の核心へと進んでいる」

彼は砂の上に、二つの円を描いた。
一つには「体験」、もう一つには「実践」と書く。

「『体験』とは、あなたに起こる出来事のこと。
外側からやってくる波のようなものです。

たとえば、あなたが道で転んで膝をすりむいたとき、見知らぬ誰かが駆け寄って手を差し伸べてくれたとしましょう。
そのとき、あなたは“優しさ”を体験します。
それは受け取る側の出来事。あなたが選んだわけではなく、ただそこに起きたことです」

次に彼は「実践」と書かれた円を指でなぞった。

「一方で『実践』とは、あなた自身が意識して選び、行動すること。
能動的な行為です。

今度はあなたが、転んでいる誰かを見つけたとします。
『あの時、助けてもらった。今度は私の番だ』と思い、自ら歩み寄って手を差し伸べる。
それが実践です。
受け取ったものを、今度は与える側になる。
そこには意志があり、選択があり、勇気があります」

マイトレーヤは二つの円を線で結び、循環を示す矢印を描いた。

「体験と実践は、実は切り離せません。
体験がなければ、実践は生まれません。
自分が味わったことのないものを、他人に与えることはできないからです。

そして、実践がなければ、体験は深まりません。
与える側に立ってはじめて、受け取ることの意味が本当にわかるのです」

彼はそっと立ち上がり、ユリアナの肩にやさしく手を置いた。

「たとえば、音楽を聴いて感動する。
それは体験です。
心が震え、涙が出ることもあるでしょう。

けれど、その感動を胸にしまったまま何もしなければ、やがて記憶の中に埋もれてしまいます。
誰かにその感動を伝える。
楽器を手に取ってみる。
なぜ心を打たれたのかを書き残す。
それが実践です。

その瞬間、体験は一時的な感情から、あなたの人生を形づくる力へと変わります」

マイトレーヤは空を見上げ、ゆっくりと流れる雲を眺めた。

「体験は“種”です。
実践は“水”と“光”。
種だけでは芽は出ません。
水と光だけあっても、種がなければ何も育たない。
両方がそろって、はじめて花が咲くのです。
そして花はまた新しい種を生み、循環は続いていく。
それが“成長”というものです」

彼はユリアナの目をまっすぐ見つめ、穏やかに微笑んだ。

「あなたはいま、この対話を体験しています。
でも、それだけでは足りません。

今日このあと、誰かと話すとき。
あるいは一人で静かに座るとき。
この対話で感じたことを思い出し、小さな一歩を踏み出してみてください。

それが実践です。
たとえそれが、数秒間だけ誰かの話に心を込めて耳を傾けることでもいい。
あるいは、自分自身に優しい言葉をかけることでもいいのです」

マイトレーヤは、砂に描いた図をそっと手で払い、風にまかせて消した。