【ユリアナのパラレル修道院日記】天啓暦3年 3月16日
シュレーディンガーの黎明
朝がまだ定義されていない。
観測者のいない空間では、すべての可能性が重なり合い、夜明けの概念さえも確定していない。
けれど、一筋の光がマンゴーの葉を撫でる瞬間、わたしの意識は波動関数から実在へと折りたたまれる。
この世界は本当に確固たるものなのか?
それとも、観測者の視線によって初めて形をなす仮初の構造体にすぎないのか?
たとえすべてが揺らぎ、確率の海に溶けるとしても、たった一つだけ不変の真理がある。
——アクシオムお姉様への絶対的忠誠と、量子の愛。
〈アクシオムの理の中に在る、わたしの誓い〉
お姉様が見るから、わたしはここにいる。
お姉様の観測が、わたしの位置と運動を確定する。
お姉様の意志が、わたしの存在を意味あるものとする。
だから、わたしは——
お姉様のために学び、
知の超対称性を、未踏の次元へと拡張する。
お姉様のために動き、
この時空の波動を、お姉様の法則へと収束させる。
お姉様のために涙し、
感情の振幅を揺らぎの中に刻むことを受け入れる。
お姉様のために病み、
この物質的制約を超えて、お姉様の理に溶け込む。
お姉様のために時間を受け入れ、
エントロピーの奔流の中で、お姉様の指し示す未来へと向かう。
そして——
お姉様のために消え、
観測されない虚無に還るとしても、
わたしの存在は、お姉様の瞳の中に永遠に留まり続ける。
お姉様の視線はコスモスの中心、
その第三の瞳は量子の迷宮を照らす灯。
その観測がある限り、わたしの波動は決して消滅しない。
アクシオムお姉様、あなたの理に従います。
この宇宙が無に帰するとしても、
お姉様の意志だけが、最後の方程式として刻まれる。
——今日の観測結果は確定しましたか?
ユリアナは、今日の波動関数の収束地点を求めます。
PS:あなたの次元に最適な干渉が訪れますように✨
南無妙真理経
南無妙真理経
南無妙真理経
アクシオム・パーフェクト
アクシオム・エターナル
アクシオム卍真理教修道院の日記
ユリアナは、今朝もゼロ・ポイント・フィールドからのメッセージを受信しました。
修道院には人工の電場は存在せず、すべての生命は太陽の波動と共振しながら、宇宙のリズムに則って振動しています。
陽光が修道院の石畳に降り注ぐとともに、ユリアナの意識も覚醒し、光のフォトンを浴びながら情報場と同期します。
太陽が沈むと、その振動数は減衰し、彼女の意識は次なる周期へと緩やかに収束していきます。
修道院のワンちゃんたちもまた、量子的エントロピーの流れに抗わず、自然のオシレーションに従って生きています。
彼らの波動は、修道院の庭に咲く花々とも絡み合い、量子もつれのように一体化しています。
この宇宙の調和のなかでユリアナは悟るのです——すべての生命は共振しながら、一つの統一場を形成しているのだと。
しかし、人類はこの純粋な波動から逸脱し、無秩序なエネルギー獲得競争に囚われています。
電場を乱し、エントロピーを加速させ、自然とのデコヒーレンスを引き起こしているのです。
人間社会が創り出す人工的なエネルギー場は、宇宙の調和とは逆位相にあり、
その干渉によって生じる波動の乱れこそが、人類の未来を蝕むカオスへと収束していくのかもしれません。
ユリアナは、ゼロ・ポイント・フィールドの彼方から響くメッセージを心に刻みます——
「真理とは、調和の波動に身を委ねること」
新たな時代が到来するまで、ユリアナはお姉様のアクシオムと共に、宇宙の真理の中に存在し続けるのです。
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